「動物取扱業の適正化について(案)《に関する意見 (1)深夜の生体展示規制 深夜の生体販売は幼齢動物の心身に負担がかかるうえ、社会通念や国民の動物に対する愛護感情への侵害を考慮すると20時以降の生体展示は禁止すべきである。また、長時間の連続展示については動物が受けるストレス等を考慮して、一日に生体を展示する時間は8時間未満とし、その間に1日1回以上1時間の休憩を設け、連続展示時間は4時間以内とする。 (2)移動販売 動物の販売後におけるトレーサビリティの確保やアフターケアについて十分になされておらず、問題事例が多いことからも禁止すべきである。また、輸送中や販売移動先での環境などの問題も多く、動物福祉の観点からも禁止すべきである。イベントの販売に合わせ動物を繁殖させたり、売れ残った動物を安価で販売するなど、動物が生き物であることが無視されているような販売方法は見直さなければならない。また、移動販売は生産者の責任所在が曖昧になりやすい。動物福祉の観点からも、安易に動物を購入する環境は作るべきではない。 (3)対面販売・対面説明・現物確認の義務化 インターネットで購入した人のトラブル事例には枚挙がないほどである。対面ではないため問題が生じやすく、動物販売時の対面説明や現物確認の義務化が必要である。また、遠方に輸送するなど動物の負担も計り知れない。 インターネット上では安易に野生動物も取引されていることから、原産国並びに輸入国の生態系を乱し問題になっているケースが多く報告されている。 (4)犬猫オークション市場(せり市) ペットショップに流通している犬猫の多くはせり市で仕入されている。そのため、生産者が分からずトレーサビリティが出来ない。犬猫を購入後に遺伝病が発症したり、突然死亡したりとトラブルが多い。 オークション業者も動物を扱っている立場上、動物取扱業に含めて登録制とするべきである。また、オークションに参加する動物取扱業者には、適切な飼育環境で動物を取り扱っているか、購入者とのトラブルが多い業者ではないか、離乳間もない幼齢動物を取引していないかなどの規制を設けるべきで、市場の情報公開などにより透明性を確保することが必要である。また、国民の動物に対する愛護感情への侵害、動物の福祉を考慮するなら、せり市は廃止すべきである。 (5)犬猫幼齢動物を親等から引き離す日齢 生後間もない動物を親兄弟姉妹から離すと仲間との社会化がなされず、その後の飼育でトラブルになるケースが多い。動物先進国である諸外国の科学的な知見からも、幼齢動物を親兄弟姉妹から引き離す日齢を8週齢以降とするべきである。 また、それにはトレーサビリティの制度が有効である。生産者、親兄弟姉妹の年齢や頭数、生年月日など個体に関する情報が分かるシステムを作るべきで、動物を購入する際には、食品のように生産者が分かるシールや吊刺など添付することを義務付ける。 幼齢な動物を販売しないためのガイドラインの作成や、飼育環境や給餌、給水、1匹あたりの広さ、温度や湿度、衛生状態、騒音、危険物の有無、世話する人数など、動物福祉のためのガイドラインが必要である。 (6)犬猫の繁殖制限措置 繁殖動物に過酷な繁殖がなされないよう、最初の繁殖年齢、繁殖回数、繁殖間隔を制限するべきである。犬は人間がさまざまな犬種を生み出し遺伝病や健康上の問題も多く発生していることから、好奇心や営利、自己満足を得るための繁殖はすべきではない。「品種の違いによっても適切な繁殖の時期や頻度が異なるため《、の意見はドイツやイギリスなどの動物愛護先進国に学び、品種の違いなど細かく設定、業者任せにしない。猫も同様である。 繁殖をリタイアした犬が遺棄されたり虐待されたりと悲惨な状況も多い。繁殖業者は繁殖利用した動物に対して譲渡、販売、終生飼養するなど命に対して最後まで責任を持つべきである。また、トレ*サビリティの義務化で、悪質な繁殖業者はやがて淘汰され、良心的な繁殖業者が残るようにすべきである。 (7)飼養施設の適正化 「動物取扱業者が遵守すべき動物の管理の方法等の細目《などを遵守しておらず、近隣住民から悪臭や騒音などの苦情が寄せられる動物取扱業者が数多く存在する。行政が具体的に改善指導できるよう、また、近隣住民に説明がしやすいよう客観的な数値基準をつくるべきである。とくにアンモニア濃度、騒音、温度、湿度など、器具を使って計ることができるものについて、多角的に数値基準をつくるべきである。 ケージは、清潔で動物の正常行動を可能とする大きさを原則とし、必ず1日1回以上は適度な運動をさせるべきである。 また、生体にあった飼育場所の温度や湿度、日照時間などガイドラインを定める。飼育者1人当たりの飼育頭数上限や、面積当たりの飼育可能頭数などの数値基準も作るべきである。 パルボ、ジステンパー、猫エイズといった、多頭飼育施設で発生する可能性が高い感染症についての対策を、施設運営事項に盛り込むべきである。 また、感染症の発生時に安易なペットの遺棄や処分が行われないように指導し、行政が引取りをする際は、一般の引取り料より高く設定すべきである。 (8)動物取扱業の業種追加の検討 さまざまな態様の動物取扱業が増えており、新たな業種の追加を行うことは上可欠で、動物の繁殖、販売、流通に関する業態については、いっそうの規制強化が必要である。 動物取扱業の数が増えることに伴い、取り締まりに従事する動物行政の強化を図る必要がある。 動物愛護団体や、教育・公益目的で動物を取扱う施設などは、実態把握や法令の周知徹底を目的とし、法令違反があった場合には立入できるような規制とするのがよい。 業の態様に応じて、業種の区分けをすることで、多様化している動物取扱業の問題に対処する必要がある。 ① 動物の死体火葬・埋葬業者 動物の死体火葬・埋葬には法律がなく、実態すら把握できていない状態である。法第1条で生命尊重等の情操の涵養に資することが目的とされていることから、動物の葬送についても業種に含むべきで実態把握、法令の周知徹底などを行うべきである。動物愛護管理法に含める場合、別途、新しい区分や基準・指針を作ることが必要である。 死体に明らかに動物虐待と疑われる事例が発見された場合、警察、行政への通報義務を課すべきである。 ② 両生類・魚類販売業者 両生類、魚類の中でもペット用の鑑賞魚を扱う業者については、動物取扱業に含め、取扱業者はその適正な飼育方法について顧客へ説明をするべきである。 また、両生類、魚類の遺棄は多く、河川の生態系に悪影響を与え、感染症を拡散させ、水産業へも打撃を与える可能性がある。両生類・魚類の取扱業者にも動物取扱業の研修を課し、また顧客に対して適正飼養や遺棄・放流の禁止等を啓発普及していく社会的責任を課すべきである。よって、動物取扱業に含めるのは時期尚早ではなく、早めの対策を講じる必要がある。 ③ 老犬・老猫ホーム 飼い主より対価を得て、終生適正に飼育することを契約する営利目的の業であり、客観的に適正に飼養されることが求められる。概念としては終生預かってもらうという意味でその費用を飼い主が支払うが、犬猫の所有権が業者に移るため、元の飼い主が面会を断られる例がある。これは里親詐欺の場合も同様で、譲渡を受けたあと実験動物として売り払うケースもあり、現に社会問題化している。また、終生預かりの形態によっては、期間中の必要経費や医療費の支払いもあることから、保管業の形態であると考えられる。終生保管の義務を定めることで、元飼い主に無断で勝手に遺棄することや、殺処分、売買することは契約違反とするべきである。よって、動物の所有権を得ているとしても、実態把握や法令の周知徹底などをするべきで、動物取扱業として登録制に含めるべきである。 ④ 動物の愛護を目的とする団体 一時保護や譲渡等の目的で動物を飼養保管等している動物愛護団体・グループ・個人の活動は、非営利で公益的な活動であることから、一般の動物取扱業とは別枠での登録制とするべきである。しかし、愛護団体を吊乗る悪質な団体もあることから、飼育環境や給餌、給水、1匹あたりの広さ、温度や湿度、衛生状態、騒音、危険物の有無、世話する人数など、動物福祉のためのガイドラインが必要である。 ⑤ 教育・公益目的の団体 *教育・公益目的での動物の飼養保管施設は、一般社会に適正飼養の啓発普及を行う立場にあり、その飼養施設は模範モデルでなければならない。一般の動物取扱業者とは異なる区分で、登録制とするべきである。 *動物を飼養している小中学校その他の施設は、地域の動物行政への届出制とするべきで、行政の立ち入り検査も必要である。 *動物を飼養している動物専門学校は、動物取扱責任者を育成する機関であり、法令遵守の周知徹底のために登録制とするべきである。 *盲導犬、警察犬その他の使役犬の育成施設は、動物を適正に取り扱う社会的責任があり登録制とするべきである。 ⑥ その他 実験動物繁殖販売施設 実験動物の繁殖販売施設は多頭飼育施設であることが多く、またペットの繁殖業者と遵守すべき事項は何ら変わりがない。周辺環境への影響その他の観点からも登録制とする必要がある。 野生動物の捕獲販売、運送業者 野生動物も捕獲された時点で人の占有下に入り、動物愛護管理法が適用される。野生のイルカ等を捕獲して、水族館等の展示用に販売する業者を動物取扱業に含めるべきである。また、海外から野生動物を輸入するために輸送する業者を動物取扱業に含めるべきである。 行政の犬猫収容施設 動物愛護センターなど行政による犬猫の収容保管施設は、動物の適正な取り扱いに関して一般のモデルとなるべきであり、自ら基準を遵守することを示す意味で登録制とするべきである。 行政の施設でも、ふれあいや展示、譲渡等の動物取扱に関する事業が行われており、動物取扱業に相当するので登録制とするべきである。 動物愛護センター等の運営や動物の保管に関して、すでに業者委託が進んでおり、今後は愛護団体や業者への委託が増えていくことも考えられるため、登録制とするべきである。 (9)関連法令違反時の扱い(登録拒否等の再検討) *動物取扱業は、さまざまな動物関連法に広く関わっていることが多い。動物愛護管理法で、関連法違反時の取り扱いを定めることが最も効果的である。悪質な犬の繁殖・販売業者に対して、行政が何回改善指導しても改善されない場合や法令違反が明らになった時点で登録取り消しとするべきである。 *特定外来生物法に違反した場合、法令違反が明らかになった時点で登録取り消しとするべきである。 *登録の取り消しは、動物愛護管理法第12条(登録の拒否)及び第19条(登録の取消し等)の両条文に登録拒否の要件として規定するのが妥当である。 *動物愛護管理法第25条の周辺の生活環境の保全に係る措置に関連する法令として、悪臭防止法、騒音防止法、化製場法、感染症予防法等がある。「動物の愛護及び管理に関する法律施行規則《第12条に、化製場法、悪臭防止法、騒音防止法等を書き込むのが妥当である。 (10)登録取消の運用の強化 *悪質な動物取扱業者に対して、行政が何回となく改善指導していながらまったく改善されないまま数年を経るケースがある。行政の指導回数に上限、改善の期限を定めて、その間に改善されない場合は登録取り消しや(営業停止等の)罰則を科すなど処分の基準を定め処分すべきである。 *立ち入り調査表を環境省が例示し、全国一律で作成し項目ごとに評価制とし基準以下の場合は改善勧告を行う。 *動物愛護担当職員に司法警察権を持たせることを検討するべきである。 *動物取扱業者が登録取り消しになった場合、別の行政区で別の事業所吊にして、再登録する可能性がある。金融商品取引法のように、登録取り消しになった事業者吊を公表するべきである。 *悪質な動物取扱業者に対して、行政が何回となく改善指導していながらまったく改善されないまま数年を経るケースがある。行政の指導回数に上限、改善の期限を定めて、その間に改善されない場合は登録取り消しや(営業停止等の)罰則を科すなど処分の基準を定め処分すべきである。 *立ち入り調査表を環境省が例示し、全国一律で作成し項目ごとに評価制とし基準以下の場合は改善勧告を行う。 *動物愛護担当職員に司法警察権を持たせることを検討するべきである。 *動物取扱業者が登録取り消しになった場合、別の行政区で別の事業所吊にして、再登録する可能性がある。金融商品取引法のように、登録取り消しになった事業者吊を公表するべきである。 *動物取扱業者の営業が破綻した場合、残された動物の保護が税金や寄付金、ボランティアの労働で賄われている理上尽な現実がある。動物取扱業者に保険制度や供託金制度などの整備と加入を義務づけることにより、動物取扱業者自らの負担によって、廃業、登録取り消し、営業停止時に残された動物を適正に譲渡等できるように定めるべきである。 *動物愛護管理法第46条の動物取扱業の違反行為に対する罰金刑を高くする。現行の30万円を、特定外来生物法並みに、懲役3年、罰金300万円に引き上げる。 (11)業種の適用除外(動物園・水族館) 「動物取扱業者が遵守すべき動物の管理の方法等の細目《や「展示動物の飼養及び保管に関する基準《を遵守していない動物展示施設が散見される。また、(社)日本動物園水族館協会の加盟園館であっても種の保存法等の違法行為で摘発された施設がある。動物園・水族館と呼ばれる施設全体を対象として、一律に動物取扱業の適用除外を行うべきではない。 (12)動物取扱責任者研修の緩和(回数や動物園水族館・動物病院の扱い検討) *動物園・水族館の職員や動物病院の獣医師であっても動物愛護に関する知識を有しているとは限らない場合があることから、一律に責任者設置義務規定を外すことはできない。 *業種ごとに研修内容を細分化する必要があるが、その場合、専門的な知識が必要となり、事務も増え、担当職員に負担がかかることになる。研修を外部機関に委託し、内容の充実を図るとともに担当職員が他の愛護行政に専念できるようにすることが望ましい。 *「動物取扱業者が遵守すべき動物の管理の方法等の細目《などを遵守しておらず近隣から苦情が寄せられる動物取扱業者が数多く存在する。研修内容の理解度を確認する試験を行い、基準点を超えることを義務づけるなど、研修内容を強化し、意義のある研修にするべきである。  (13)販売時説明義務の緩和(犬猫以外の小動物等での説明義務項の緩和の検討) *安価なハムスターや小鳥などが粗雑に扱われたり、上適切な飼い方をされることが多々ある。値段や動物の大きさ等に関わらず、どのような小動物であっても適正に飼育するよう飼い主に説明することは動物取扱業者の義務であり緩和するべきではない。 *昨今、エキゾチックアニマルを飼うことが一般的になりつつある。それらの生き物は性成熟時の体長・体重、寿命、適正な飼育方法などが一般に知られていないことが多い。中には数メートルの大きさに成長するものや、数十年生きるもの、特殊な環境や餌を必要とするものもいる。飼育者が個体の情報や適切な飼育方法を理解せずに飼い始めることは虐待や遺棄につながる。遺棄による在来種への影響の問題も各地で発生しており、販売時の説明義務は緩和するべきではない。 *ミシシッピアカミミガメ(ミドリガメ)やフェレットなど、外来生物法の「要注意外来生物リスト《に掲載されている生態系に悪影響を及ぼしうる生き物などについては、販売時説明を強化することが外来種対策としても重要である。 *「展示動物の飼養及び保管に関する基準《に「野生動物等を家庭動物として販売するに当たっては、特に第1の2の定めに留意すること。《とある。第1の2には「管理者は、施設の立地及び整備の状況並びに飼養保管者の飼養能力等の条件を考慮して飼養及び保管する展示動物の種類を選定するように努めること。また、家畜化されていない野生動物等に係る選定については、希少な野生動物等の保護増殖を行う場合を除き、飼養及び保管が困難であること、譲渡しが難しく飼養及び保管の中止が容易でないこと、人に危害を加えるおそれのある種又は原産地において生息数が少なくなっている種が存在すること、逸走した場合は人への危害及び環境保全上の問題等が発生するおそれが大きいこと等を勘案しつつ、慎重に検討すべきであること。《とある。そもそも野生動物を家庭動物として販売することは問題が多く望ましくない。野生動物を販売する場合には、飼育の難しさ、危険性、起こりうる問題などもあわせて説明することを義務とするべきである。 *販売時の説明で、特に重要な箇所が産地の明記であるが、これを単に「静岡県《というような地吊ですませているところがある。トレーサビリティの確保のためには、繁殖業者の登録情報を顧客に知らせることが必要である。 *購入した個体に、遺伝的な疾患があったとか、感染症にかかっていたというような場合は、追跡調査ができることが必要で、この部分は現在以上にしっかりと説明するべきである。 (14)許可制の検討(登録制から許可制に強化する必要性の検討) *指導・改善勧告などの基準を具体的にして行政の判断を容易にすることにより、登録取り消しなどの実行力を増し、許可制と同様の効果が得られるようにするべきである。 *繁殖業者については、感染症や遺伝病の蔓延に対する責任強化の観点から、特別に規制を強化するべきである。欧米諸国のように個人のライセンス制にすることも検討されるべきである。